DeFiの使い方
資産と収益の流れ
交換・貸付・借入・流動性提供の仕組みを、費用と数字から理解する。
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このガイドの読み方と到達点
このページで分かること
- 交換・貸付・借入・流動性提供で、収益と損失が生まれる仕組みを区別できる
- 表示年率の違い、清算される条件、保有した場合との価値の差を数字で読み解ける
- 往復費用と引き出し条件を、利回りと分けて確認できる
対象:ウォレット・ネットワーク・署名の基本を理解し、DeFiの画面を読みたい方へ。
DeFiを使う前に知っておきたいのは、利回りの高さよりも「資産がどこへ移るか」「何の対価として収益が生まれるか」「どの条件で損失が出るか」です。
このページでは、スワップ、貸付、担保付き借入、流動性提供を、具体的な数字で説明します。
対象は、ウォレット・ネットワーク・署名の基本を理解し、DeFiの画面を読めるようになりたい方です。
まだ曖昧な場合は「暗号資産の基本」から確認してください。
口座開設やウォレット接続をしなくても、最後の確認練習まで進められます。
参照確認日:2026年10月3日(日本時間)。
数値はすべて説明用の仮定です。
実際の金利・価格・担保条件は、サービス、バージョン、ネットワークごとに異なります。
式や条件を確かめながら読む場合は、目安より時間がかかります。目次から必要な章だけ読んでも構いません。
1 DeFiでは誰が何を動かしているのか
DeFiは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを利用する金融の仕組みの総称です。
スマートコントラクトは、定められた条件に従って処理するプログラム。
ウェブサイトは主に操作の入口で、資産の移転や残高の記録は、その先のコントラクトで処理されます。
基本の流れは「利用者 → ウォレットで確認・署名 → コントラクトが処理 → 公開記録で結果を確認」です。
自己管理型ウォレットを使っていても、貸付や流動性提供で預けた資産はコントラクトのルールに従います。
管理者権限、外部価格データ、画面を提供する事業者などへの依存もあり、「分散型」という名前だけで安全性は判断できません。
参照:EthereumのDeFi解説、Aave V3の仕組み
目次へ戻る ↑2 まず四つの使い方を分ける
比較表が画面に収まらない場合は、表の中を左右にスクロールして読めます。
| 操作 | 何をするか | 対価や目的 | 特に確認する費用・損失要因 |
|---|---|---|---|
| スワップ | あるトークンを別のトークンに交換 | 資産の交換 | 交換手数料、ガス、価格への影響 |
| 貸付・供給 | 貸借用のプールに資産を供給 | 主に借り手が払う利息 | 変動金利、引出可能額、資産・契約のリスク |
| 担保付き借入 | 資産を担保に別の資産を借りる | 資産を売らずに借入資金を得る | 借入利息、担保価格の変動、清算 |
| 流動性提供 | 交換用のプールに資産を供給 | 主に利用者が払う交換手数料 | 保有数量の変化、IL、管理費用 |
貸借用プールでは供給者の資産を借り手が借り、借り手は担保を預け、返済と利息を支払います。供給者の引出・利息には条件があります。交換用プールではLPが資産を提供し、交換利用者はBを入れてAを受け取ります。交換手数料の一部がLPの収益になる設計があります。
供給・借入・交換は、それぞれ目的に応じて選ぶ使い方です。二つのプールを続けて使う手順ではありません。
貸借用プール
資産を貸したい人と、担保を預けて借りたい人をつなぐ
供給者から
資産を供給
供給者へ
引出・利息
(条件あり)
プール利息は主に借り手から
借り手へ
借入資産
借り手から
担保・返済
・利息
担保と借りる資産は、同じとは限りません。担保の管理方法、借入条件、供給者が引き出せる量はサービスごとに確認します。
交換用プール
二つの資産を交換するための流動性を用意する
提供者(LP)交換用の資産を提供
LPから
資産を提供
LPへ
手数料の一部
(仕様による)
プール例:トークンAとB
利用者へ
Aを渡す
利用者から
Bを受け取る
手数料の配分や収益の受取方法は仕様によります。LPの資産数量も交換によって変わり、貸付の利息とは仕組みが異なります。
代表的な仕組みを簡略化した図です。「プール」という同じ言葉でも、貸借と交換では資産の用途・収益・損失の条件が異なります。
ここでいう「プール」は、複数の利用者の資産をまとめたものです。
同じ名前でも、貸借用と交換用では役割が違います。
貸借用プールでは、供給者の資産を借り手が利用し、借り手が利息を払います。
交換用プールでは、利用者が一方のトークンを入れ、もう一方を受け取ります。
流動性提供者(LP)は交換に必要な資産を用意し、利用者が払う手数料の一部を受け取ります。
どちらも資産を預けますが、収益の出どころと残高が変わる理由は違います。
銀行預金と同じ元本保全や払戻しの条件を想定せず、その商品の説明を読みます。
参照:Uniswapの交換と流動性提供、LPの手数料収入と数量の変化、Aaveの供給
目次へ戻る ↑3 スワップはプールの中身を変える
スワップは、あるトークンを別のトークンに交換する操作です。
分散型取引所(DEX)で使われる代表的な自動マーケットメーカー(AMM)では、利用者が交換用プールに一方のトークンを入れ、もう一方を受け取ります。
プール内の数量が変わると、計算上の交換価格も変わります。
これが、自分の注文によって起こる「価格への影響(Price Impact)」です。
たとえば、100 Aと10,000 Bが入った単純なプールに1,000 Bを入れると、受取量は約9.09 Aです。
交換前の比率が「1 A=100 B」でも、10 Aをそのまま受け取れるわけではありません。
自分の注文がプールの中身と価格を動かすためです。
100 Aと10,000 Bのプールに1,000 Bを入れると、数量の積を一定に保つためAの残量は約90.91枚となり、利用者は約9.09 Aを受け取ります。
- 交換前のプール100 A
10,000 B数量の積は1,000,000 - 利用者が入れる1,000 BBの残量は11,000枚へ
- 交換後のプール約90.91 A
11,000 B数量の積を一定に保つ
手数料なしの単純な定積型モデルです。集中流動性などは扱っていません。すべてのDEXにそのまま適用できる計算ではありません。
架空例:1,000 Bを入れると何枚受け取るか
この例では、AとBの数量の積を一定に保つ定積型モデルを使い、手数料を除き、価格範囲の制限がないと仮定します。
集中流動性などを使う仕組みには、そのまま当てはまりません。
すべてのDEXに使える計算ではありません。
計算を確かめる
この架空例の受取量:約9.09 A。
9.09 Aになる計算を見る
- 交換前:100 A × 10,000 B = 1,000,000
- 1,000 Bを入れた後:Bは11,000枚
- Aの残量:1,000,000 ÷ 11,000 ≒ 90.91枚
- 受取量:100 − 90.91 ≒ 9.09 A
この交換用プールに資産を出す側が、第6章の流動性提供者です。
参照:UniswapのAMMと価格計算、Price Impactの説明
スリッページとの違い
スリッページは、見積もり時点と実際の成立結果の差です。
待っている間の相場変動や他の取引などで生じます。
一方、価格への影響は自分の注文が価格を動かす部分で、通常は見積もりにも織り込まれます。
両者を同じ手数料として足し算すると、費用を二重に数えることがあります。
説明用の架空画面・取引できません。
仮に「見積もり受取量」が100枚、「最小受取量」が99枚と表示されているなら、前者は受け取る見込み、後者はこれ未満なら成立させない下限です。
表示名はサービスによって異なります。
説明用の架空画面です。見積受取量100枚は現在の条件での見込み、最小受取量99枚はこの例で成立を認める受取量の下限です。価格への影響は自分の注文が価格を動かす部分。ネットワーク費用は別に確認します。この図から取引はできません。
- 見積受取量
- 100枚
見積もり時点の条件による見込みです。確定した受取量ではありません。
- 最小受取量
- 99枚
この例で、成立を認める受取量の下限です。見積もりの100枚とは役割が違います。
- 価格への影響
- 自分の注文による価格変化
通常は見積もりに織り込まれます。別の手数料として重ねて引かないようにします。
- ネットワーク費用
- 別に確認する費用
処理に必要なガスなどです。受け取る数量と、支払う費用を分けて確認します。
100枚・99枚は表示の意味を学ぶための仮定です。推奨する許容幅や、現在の料率・見積もりを示していません。実際の画面では、費用がどこに含まれるかも確認します。
99枚は利益を保証する数字ではなく、この取引で受け入れる受取量の下限です。
許容幅を大きくすれば不利な条件でも成立しやすくなり、必ず有利になるわけではありません。
小さすぎれば失敗しやすく、ブロック上で実行された失敗にはガス代がかかる場合があります。
目次へ戻る ↑4 貸付の金利と引き出し条件
貸付サービスでは、供給された資産を借り手が利用し、利息を払います。
貸し手と借り手は、同じ貸借用プールの反対側にいます。
Aaveのように、資金の利用率などに応じて金利が変わる仕組みもあります。
画面の年率は、その数字が1年間続く約束とは限りません。
01 貸付で受け取る利息
利息を支払う
配分する
利息を受け取る
残る条件:変動金利・引出可能な量・供給資産と契約のリスク。
02 流動性提供で受け取る交換手数料
手数料を支払う
配分する
保有数量も変わる
残る条件:保有との価値の差(IL)・価格範囲・資産と契約のリスク。
出どころを比べる概念図です。配分方法や追加報酬はサービスごとに異なります。矢印は収益の経路を示し、元本や将来の収益を保証しません。
要点:「何%か」と一緒に、「誰が何の対価として払うのか」を確認します。
また、残高と「今すぐ引き出せる量」は同じとは限りません。
プール内の多くの資産が貸し出されている場合や、自分の借入の担保に使っている場合には、引き出しに制約があります。
入口の利回りと一緒に、出口の条件を読みます。
APRとAPYを数字で比べる
一般的に、APRは複利を含めない年率、APYは利息を再投入する複利の効果を含めた年率です。
ただしDeFiの表示では、報酬トークン、手数料、自動再投資の有無、計算期間などがサービスによって違うため、算出条件の確認が必要です。
一定の金利を仮定した年率と短期費用の例
仮に1,000枚をAPR 12%で1年間運用し、金利が一定なら、結果は次のように分かれます。
- 利息を再投入しない:利息120枚、合計1,120枚
- 月利1%で毎月再投入する:合計は1,000 × 1.01^12 ≒ 1,126.83枚。APYは(1.01^12 − 1)× 100 ≒ 12.68%
計算上の差は約6.83枚です。現実には変動金利、再投資の費用、報酬の価格変動などが結果を変えます。
短期の費用も見てみましょう。
仮に1,000ドル相当を年率6%の単利で30日運用し、1年を365日とすると、利息は1,000 × 0.06 × 30 ÷ 365 ≒ 4.93ドルです。
入出金などの合計費用が8ドルなら、価格変動を無視しても差引きは4.93 − 8.00 = −3.07ドル。
年率だけでは、短期間の損益は分かりません。
元本1,000ドル・年率6%・単利・30日・1年365日。金利一定、価格変動なしを仮定します。
利息 +4.93ドル費用 8.00ドル差引き −3.07ドル
利息は1,000 × 0.06 × 30 ÷ 365 ≒ 4.93ドル。合計費用8ドルは説明用の仮定です。変動金利・報酬の価格変動・再投資費用などで結果は変わります。
要点:年率がプラスでも、短期間の費用後損益がプラスになるとは限りません。
参照:CFPBのAPYと年率の定義、APYの計算に用いる前提。
ここでは一般的な数学上の違いを説明しており、DeFiに銀行預金の保護制度が適用されるという意味ではありません。
目次へ戻る ↑5 担保付き借入と清算
担保付き借入では、返済の裏付けとして資産を預けます。
現在の借入比率(現在のLTV)は「借入額 ÷ 担保価値」です。
担保20万円に対して10万円を借りていれば50%です。
一方、Aaveの公式資料で示す上限LTVは、担保価値に対して新たに借りられる最大割合のパラメーターです。
現在の借入比率、上限LTV、清算しきい値は別々に確認します。
清算は、担保が十分でなくなったときに、ルールに従って担保の一部などを使い、借入を返済させる処理です。
Aaveではヘルスファクター(HF)が1を下回ると清算対象になります。
清算する側への報酬が担保から差し引かれる場合もあります。
架空例:担保価値が下がるとHFはどう変わるか
単一担保の簡略例として、借入額を10万円、清算しきい値を80%で固定し、担保価値の違いを見ます。
HFは「担保価値 × 清算しきい値 ÷ 借入額」です。
| 担保価値 | HF | この例での状態 |
|---|---|---|
| 20万円 | 1.60 | 例の開始時点 |
| 16万円 | 1.28 | 清算の境界に近づく |
| 12万5,000円 | 1.00 | 境界 |
| 12万円 | 0.96 | 清算対象 |
これは時間の経過を予測した表ではありません。
利息、為替、借りた資産の値動きを無視した単一担保の例です。
HFが1を上回ることは、損失がないことや今後も清算されないことを保証しません。
実際には借入残高の増加や借入資産の価格上昇でもHFは悪化します。
清算の量や手数料はサービスの仕様次第です。
HFに普遍的な「安全な数値」はなく、急な値動きや混雑で返済・担保追加が間に合わない可能性もあります。
借入可能額の最大値は、安全に借りられる額を示すものではありません。
参照:Aave V3の貸借とリスクの仕組み、LTVと清算しきい値の違い、ヘルスファクターと清算
目次へ戻る ↑6 流動性提供とインパーマネントロス
交換用プールに資産を供給する人を、流動性提供者(LP)と呼びます。
交換が行われると、受け取れる手数料とともに、持分に対応するトークンの数量も変わります。
インパーマネントロス(IL)は、同じ資産をそのまま持っていた場合と比べて、流動性提供側の価値が下回る差を指します。
通常は手数料収入などを除いて比べます。
「元本から必ず減った額」とは異なります。
架空例:保有と流動性提供を同じ条件で比較
仮に、1 A=100ドルの時点で1 Aと100ドル相当のBを、50対50の定積型プールに供給したとします。
Bは1枚=1ドルを維持し、手数料なし、価格範囲の制限なしと仮定します。
- Aが200ドルになったとき、そのまま保有していれば合計300ドル
- 外部との価格差を使う交換(裁定取引)がプール内の数量比を変え、価格が外部価格に近づくと、持分は約0.7071 Aと141.42 B
- その価値は約282.84ドルで、保有した場合より約17.16ドル、約5.72%少ない
開始時の200ドルより増えていても、保有との比較では差が生じています。
手数料収入がこの差を上回るとは限りません。
また、名称に「一時的」とあっても、価格が元に戻る保証はありません。
開始額はどちらも200ドル。Aの価格が100ドルから200ドルになると、そのまま保有した場合は300ドル、流動性提供では約282.84ドル。保有した場合と比べて約17.16ドル、約5.72%少なくなります。
Aの価格が100ドル → 200ドルに変化
同じ開始資産を、保有とLPで比較
同じ0ドル起点・同じ縮尺で比較
両方に共通の破線300ドル
保有した場合との比較:LPは約17.16ドル少ない。
開始額から17.16ドル減った、という意味ではありません。
数量の内訳を確認する
そのまま保有
300ドル
1 A + 100 B
200ドル + 100ドル
流動性提供(LP)
約282.84ドル
約0.7071 A + 141.42 B
約141.42ドル + 141.42ドル
Bは1枚=1ドルを維持する仮定。50対50の定積型で、手数料・追加報酬を除き、価格範囲の制限もありません。集中流動性には、この計算をそのまま使えません。
集中流動性では、提供者が使われる価格範囲を指定します。
価格が範囲を外れると片側の資産だけになったり、そのポジションが交換手数料を稼がなくなったりします。
上の簡単なIL計算を、そのまま当てはめないでください。
参照:Uniswap v2の収益とIL、UniswapのIL解説、集中流動性
目次へ戻る ↑7 利回りとは別に見るリスク
移転の制限
誤り・更新の遅れ
ネットワーク・バージョンを特定して読む
依存先を確認するための概念図です。構成や、オラクル・ブリッジの利用有無はサービスごとに異なります。矢印は確認する関係を示し、資金移動の必須手順や普遍的な実装順序を示しません。
要点:利回りや監査の表示だけでは、どこかが止まったときの回収条件まで分かりません。
- コントラクト:プログラムの不具合や攻撃で資産を失うリスク。監査済みでも、対象のバージョン・範囲・未解決事項を確認します。監査は無事故の保証ではありません。
- オラクル:外部の価格などをコントラクトに届ける仕組み。価格の誤り、更新の遅れ、操作などが、借入や清算の判断に影響することがあります。
- ブリッジ:ネットワークをまたいで資産・情報を移す仕組み。追加のコントラクトや検証者への依存、資産を戻せないリスクがあります。
- トークン:値下がり、ステーブルコインのデペッグ、発行者の移転制限など。貸付やLPの収益とは別に価値を動かします。
- 操作と承認:偽サイト、過大な利用許可、内容の分からない署名。秘密鍵を渡さなくても、署名した権限が悪用される場合があります。
複数のサービスを組み合わせる場合は、関係する仕組みを一つずつ確認します。
どれか一つの停止や損失が、他の資産の回収にも影響しないかがポイントです。
参照:コントラクトのセキュリティ、オラクルの仕組みと課題、ブリッジのリスク、USDCのリスク開示、署名フィッシング
目次へ戻る ↑8 資金を動かす前の読み取りチェック
公式ドキュメントと、接続せずに見られる市場画面で確認します。この練習では接続や署名をせず読める公開情報だけ使います。
- 対象を特定する:サービス名、バージョン、ネットワーク、トークンの公式アドレスが一致するか
- 目的と収益の出どころを説明する:何を交換・供給・借入するのか。収益を得る操作なら、借入利息、交換手数料、追加報酬のどれか、何のトークンで払われるか
- 費用を一往復で数える:承認、供給・交換、回収・返済、それぞれのガスと利用料。見積もりに含まれる費用を重複計上しない
- 出口を確認する:引出可能な流動性、待機期間、売却先、停止条件を公式説明で調べる
- 操作固有の数字を読む:スワップは最小受取量と価格への影響、借入はLTV・清算しきい値・HF、LPは価格範囲と手数料条件
- 権限と安全対策を確認する:管理者の変更権限、監査の対象、事故時の公式案内先。分からない点は「未確認」と残す
最後に、実際に取引せず、次の四文を埋めてみてください。
- 私は○○を差し出し、○○を受け取る。
- この操作の目的は○○。収益を得る場合、その出どころは○○。
- ○○になると、損失や引き出し制限が起こりうる。
- 操作を終える、または資産を回収するには○○が必要。
空欄が残ったところが、資金を動かす前に確認する点です。
参照:Aaveの供給・引き出し情報、Uniswapの公式概念説明
目次へ戻る ↑実例で読む / DeFiの貸付と借入
供給してから回収するまでを、残高と条件で追う
本編の「貸付の金利と引き出し条件」「担保付き借入」を、入口から出口までつなげます。
供給残高は、自分が回収できる持分を示す一方、その瞬間に引き出せる量とは違います。
持分、プールに残る量、自分の借入条件を分けて読みましょう。
Aave V3の一般的な貸借を参考にした学習用の例です。
数値は仮定で、現在の市場・金利・利用可能額や安全な借入額を示しません。
他のDeFi商品や異なるバージョンへ、そのまま適用はできません。
資料確認:2026年10月4日(日本時間)。
1. 供給後は「手元の資産」と「供給した持分」が別の残高になる
供給は、貸借用プールへ資産を移す操作です。
Aave V3の通常のaTokenは、供給した元の資産と利息に対応する残高を記録するトークンです。
元の資産を供給すると発行され、回収すると対応する分が消却されます。
仮に手元のUSDCが1,000枚あり、そのうち600枚を供給したとします。
供給直後の手元USDCは400枚、供給持分は600枚相当です。
別々に表示されても、合計1,600枚へ増えたわけではありません。
- 供給前手元 1,000枚供給持分 0枚合計 1,000枚相当
- 600枚を供給手元 400枚供給持分 600枚相当合計 1,000枚相当
- 60枚を回収手元 460枚供給持分 540枚相当合計 1,000枚相当
借入がなく、回収に十分な流動性がある仮定。利息・ガス・価格変動は除いて、持分の移動だけを比較しています。「枚相当」は同じ元資産の数量であり、円やドルの元本保証ではありません。
持分トークンは、追加でもらえる利益とは限らない
aTokenの通常の残高には、元の供給量と発生した利息が反映されます。
元のUSDCと、そのUSDCに対応する持分を重ねて数えると二重計上になります。
報酬として別のトークンが配られる場合は、これとは分けて記録します。
この例は通常のaTokenです。
ラップされた持分など、枚数ではなく交換比率が変わる方式もあります。
名称だけで決めず、何の資産を何枚回収できる仕組みか、公式資料で確かめます。
- 手元残高、供給持分、別途報酬を別欄に記録する。
- ネットワーク・市場・持分トークンと、対応する元資産を照合する。
- 回収後は、持分の減少と手元の受取量を取引履歴で確認する。
2. 利用率は、借りられている割合。自分の利回りではない
利用率は、貸借用プールの資産がどれだけ借りられているかを表す数字です。
ここでは、同じトークンの供給量1,000枚、借入中800枚、プールに残る量200枚という簡略例で考えます。
利用率は800 ÷ 1,000=80%です。
自分の供給持分が300枚あっても、プールに200枚しか残っていないこの瞬間には、流動性だけを見ても300枚の全額回収には足りません。
貸付の持分と、今すぐ送れる元資産の量を分ける理由です。
棒の全長はどちらも1,000枚、同じ縮尺です。借り手による300枚の返済以外は動かず、利息・手数料・準備金などを省いた概念図。後段は返済が起きた場合の比較で、いつ回収できるかの予測ではありません。
利用率80%でも、年利80%という意味ではない
金利は利用率だけでなく、各市場の計算式や設定値で決まります。
Aave V3には利用率のある境目から金利の変化が大きくなるモデルもあり、利用率から金利を単純な比例で求めることはできません。
引出可能な量は、他の人の供給・借入・返済・回収でも変わります。
さらに自分が供給資産を借入の担保にしている場合は、プールに資産があっても自分の担保条件から引出しが制約されます。
- 同じ資産・同じ市場の供給持分、借入中の量、残る流動性を見る。
- 利用率と供給年率を別の数字として読む。
- 流動性不足と、自分の借入による制限を分けて確認する。
3. 担保を先に減らせるかは、返済後まで計算して確かめる
返済は借入残高を減らす操作、担保の回収は供給した担保を減らす操作です。
同じ「資産を戻す」つもりでも、ヘルスファクター(HF)への影響は逆になります。
単一担保の簡略式は、本編と同じ「担保価値 × 清算しきい値 ÷ 借入価値」です。
仮に担保が1,000ドル相当、借入が600ドル相当、清算しきい値80%なら、HFは約1.33です。
担保を300ドル分先に回収すると、計算上は700 × 80% ÷ 600 ≒ 0.93。
Aave V3では、回収後のHFが1未満になる引出しはできません。
- まず返済担保:1,000ドル借入:600 → 400ドルHF:2.00
- 次に300ドル分を回収担保:1,000 → 700ドル借入:400ドル回収後の仮計算:HF 1.40
単一担保・価格固定・借入利息と費用なし。十分な流動性がある仮定です。後段はHF条件だけの比較で、取引の成立や安全性を保証しません。返済額200ドルは借りた資産で返す額の換算値であり、任意の資産を200ドル分送れば返済になる意味ではありません。
「供給残高がある」と「自由に全額引き出せる」は違う
返済時には、借りた資産と現在の借入数量を確かめます。
借入利息が増えたり、価格が変わったりすると、上の計算も変わります。
借入を残したまま全担保を回収することは、この仕組みではできません。
実際には複数担保、資産ごとの清算しきい値、利用モード、市場の制限も関係します。
HFが1より大きくても、普遍的な安全値ではありません。
回収を考えるときは、現在だけでなく、回収後に残る担保・借入・費用を組にして読みます。
- 借入の銘柄と残高、発生済み利息、返済に必要な手元資産を確認する。
- 希望の回収量を引いた後のHFと、プールの流動性を別々に確認する。
- 回収後に残るポジションを記録し、供給した元本だけで判断しない。
入口では「何を供給し、何を受け取るか」、出口では「何を返し、何をどれだけ回収できるか」を書き出します。
持分・流動性・担保条件を分けると、利回りの表示だけでは見えなかった制約を確認できます。
理解を確認する
答えを開く前に、ご自身の言葉で考えてみてください。取引や接続は不要です。
担保20万円、清算しきい値80%、借入10万円のHFは?
1.6です。20万円×80%÷10万円で計算します。仮定の例で、実際の清算条件や安全な数値を示すものではありません。
LPが開始時より増えていれば、ILは生じませんか?
生じる場合があります。
例ではLPが200ドルから約282.84ドルに増えても、そのまま保有した300ドルと比べると約17.16ドル少なくなっています。
よくある疑問
ステーブルコインを貸せば値動きは気にしなくてよいですか
基準価格からの乖離や、円換算時の為替変動があります。
加えてコントラクトと引き出し条件も確認します。
価格の安定を目指す設計と、貸付元本の保証は同じではありません。
借りずに供給するだけでも清算されますか
ここで説明した担保付き借入の清算は、借入債務を抱えたポジションの仕組みです。
自分に借入がなくても、供給資産の値下がり、貸付市場の損失や流動性不足などは残ります。
別の商品が内部で借入を使う場合もあるため、戦略を確認してください。
表示年率が高い順に選べばよいですか
年率の算出期間、報酬の種類、複利の前提、費用、引き出し条件が異なります。
同じ前提にそろえても、将来の金利や価格は確定しません。
数字を比較する前に、何を引き受ける対価なのかを説明できることが重要です。